• 息子から母親への花束便

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    アルバイトをしながら舞台活動をしている彼女(22歳)はつい最近、母親に「あなたがいてよかった」と言われたという。

    「嬉しかった。こちらこそ産んでくれてありがとうって言いたかったけど、てれてしまって…でも、いつかはこの言葉を伝えようと思っている。」

    親にそうした気持ちを、自分の誕生日に毎年、母親に花束便を贈ることで表しているのだろうと考えられる31歳の息子がいる。

    誕生日はおろか母の日にも何もしたことがなかった息子から、ある年を境に毎年、花束便を受け取るのは千葉県に住む58歳の母親。
    彼女宛の花束便が届くのは決まって、贈ってくる息子の誕生日だ。

    「母さんへ」

    初めての花束便にはわずかそれだけのメッセージが添えられていた。
    息子が社会人となって遠く離れて暮らすようになって数年後のことだ。
    「息子から花束が届くなんて考えたことありませんでしたし、私の誕生日や母の日にも梨のつぶてだった息子から突然、花束が届けられて、え、え?・っ
    ていうのが正直な気持ちでした」
    いきなり花を贈ってくるなんて、なんかあったのかしらとかえって心配し、その夜息子に電話してから、その日が息子の誕生日だったことに気がついたという。
    花、届いたよ。どうしたの?

    とうしたのって、何が。

    だって、あんたから花束もらうなんて初めてのことだし。
    何もないよ。まあ、なんだ、俺が生まれた日の記念だよ。

    あら、忘れてた。ごめん、なんか贈ろうか。

    「てっきり誕生日祝いの催促かと思ってそう言ったら、ばか、そんなことじゃないよ。もう電話切るぞ、
    がちゃん、でしょ。でも、次の年も花束便が届くと、いろいろその意味を考えてしまうんですよね」

    社会人になり、家族と離れて暮らしてみて、母親に対して気がつく思いもあったのだろうか。
    いままで一度もしてこなかった母の日や誕生日に、いまさらプレゼントなんて照れくさいから、
    自分の誕生日を理由にしているのだろうか。

    息子は高校卒業後、進学もサラリーマンになることもせず、花火職人の道を選んだ。
    事故で聴覚をやられ、その治療のために半年ほど休職して入院し、通院もしていた時期がある。
    その事故がきっかけで息子が変わったのなら、2年も間を置いて花束を贈るようになるのもおかしい。

    二回目の花束便が届いてから半年ほど経ったころだ。「花束の謎」が解けるような電話が息子から入った。
    俺、いま、女と一緒に暮らしているんだ。

    「たぶん、息子はその人の考え方や生き方に影響されたのではないかと思います。あの子にそんなやさ
    しい心遣いができる女性がいてくれるんだと知ったら、それがまた、うれしくて」

    同棲三年目に入った今年の夏、息子から「近いうちに彼女と会わせるから」との電話が入ったという。
    やがて、彼女が息子の口から花束の真意を伝えられる日が来るのかもしれません。

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