• 超格安思い出アルバム

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    ヘルパーをしている彼女(56歳)の利用客(ヘルパーとして出向くお宅を業界ではこう呼んでいるとのこと)の一人に77歳の老婦人がいる。
    夫とは20年近く前に死別。3人の子供がいるのだが、一人暮らしを選んでいるのは、それなりの事情があるのだろう。

    週二回、老婦人のところに出向くようになって一ヵ月ほど経ったころだ。彼女にうちとけてきてくれたのだろう、
    「いまはベルベットというそうですが、ビロードで布張りした古くなったものなど、数冊のアルバムを見せてくれるようになった」という。
    利用客の話相手になるのもヘルパーの大切な仕事だ。

    ほら、これ、私よ。この人が死んだ連れ合い。いい男でしょ。
    この子が上の子で、こっちが末っ子。

    アルバムをめくっては写真を一枚一枚指さし、婦人は彼女に説明する。

    「ときおり、前の説明と食い違っていることもありますが、おばあちゃんは私にアルバムを見せるとき、
    「一番楽しそうな表情をするんです」
    未整理のまま、紙袋に入れたままの写真も数多くある。
    その写真の中には老婦人がかわいがっていた愛犬の写真も目立つ。
    連れあいが亡くなった後に飼った雑種の犬だという。

    家族と一緒に写った写真もあるのだが、老婦人が一番いい表情を見せているのは、その犬と一緒に写った写真だという。
    そうした写真を見ると、子供と離れて暮らしているわけがなんとなく想像できるような気がしたそうだ。

    ヘルパーの彼女は未整理の写真の整理にアルバムを贈ろうと考えたが、ヘルパー先でものをいただくのもあげるのも禁止されている。

    そこで彼女が利用したのが、プリントショップがサービスで付ける簡易アルバムだった。

    「うちには捨てないでとっておいたものが十数冊あったし。まあ、これなら事務所にバレてもそんなに大事にはならないかなと」

    他人には価値はないけど、自分には大切なもの。

    結婚祝いや子供の誕生記念に贈られたアルバムにはかけがえのない時の流れが納められている。
    老婦人は、ヘルパーの好意に涙を流して喜んだという。

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